mixiの成長が、インターネットサービスの新たな可能性を示したことは記憶に新しい。その影響か、「ポストmixiはどのようなサービスだろうか?」という質問を受けることがたびたびある。
さまざまなサービスが次々とリリースされているからではあるが、この質問の回答にとなるようなサービスは、正直にいえばここしばらく現れなかったのが事実である。
しかし最近になり、シリコンバレーからこの質問に対する回答となる可能性の高いサービスがついに登場した。
ミニブログサービスに分類されるアメリカのtwitter.comは、まさにポストmixiの様相を見せているサービスだ。
Web2.0界の音楽サービスとしてその名を広めたodeo.comの事務所で、2006年5月よりサイドプロジェクトとして始まった同サービスは、2006年8月のオープン後、8ヶ月が過ぎ一時は、Alexaのランキングで641位にランクイン(2007年4月16日現在は1410位)し、1日のポスト数が実に7万ポストに到達するほどの勢いを見せた。
Alexa Rank
次ページからはポストmixi? の様相を見せるミニブログサービスのしくみにせまっていきたい。
独白だがリアクションがつきやすい雰囲気
簡単な無料登録後すぐに利用可能となるtritter.comでは、ログイン後画面の中央に”What are you doing?(今何しているの?)”という質問ではじまる入力ボックスが表れ、このボックスに140字以内の簡単な文を入力すればこの文が投稿されるのだが、これら文章がブログ記事の様に蓄積され、自分の個人ページが作られていく。
twitter.com
自分が書いた文が最新投稿順に蓄積され、それが個人ページになることから「ミニブログ」というカテゴリー名がつけられたと考えられる。
しかし、実際にミニブログが使用されている様子を見てみると、まるでソーシャルネットワークサービス:SNS(Social Network Service)とチャッティングサービス:IRC(Internet Relay Chat)が結合したサービスのようにも見える。
既存のブログがひとりで独白する「もの悲しい空間」であると仮定すると、twitter.comを筆頭としたミニブログは、まるで独白をするようでありながら実際には多くの人々と対話をしているような楽しみがあり、温かみのある空間を演出しているといえるのではないだろうか。
サービス開始後わずか8ヶ月で大きな成功を収めたtritter.comは、すでに国内外で多くの類似サービスが作られている。
国内では、2007年4月10日に株式会社アクセラージャパンがchat.doovii.comというサービスをオープンした。
その他にも国外でオープンしたtwitter.comの類似サービスをひとつにまとめてみた。業界の動きを見てみると、今年中にも国内のみだけでも10個以上の類似サービスが出現するのではないだろうか。
- 雨後のたけのこのように増殖するミニブログ
- http://www.tumblr.com/(英語)
- jaiku.com(英語)
- hubpages.com(英語)
- chat.doovii.com(日本語)
- me2day.net(韓国語)
- playtalk.net(英語, 韓国語, 中国語)
ミニブログが流行ると思う3つの理由
ミニブログサービスが日本国内でも成功するだろうか?」という部分は非常に気になると思う。結論からいうと、筆者はミニブログが国内で相当の成功を収めることができると考えている。
理由1:オンラインコミュニティーの数は実はまだまだ不足している
ミニブログが大きく成功するだろうと考える第1の理由は、国内での全体インターネット人口を考慮したとき、それに見合う大規模オンラインコミュニティーの数がまだ不足しているという点である。
百式の田口さんの表現を借りて言うならば、ミニブログは「とってもゆるいコミュニティ」だといえる。
そうでありながら、ブログと同じくCGM(Consumer Generated Media)であるともいえ、日本国内では800万人のユーザー数を持つmixiという巨大なSNSサービスが日本一のコミュニティとして存在しているが、国内のインターネットユーザー数が8000万人であることを考えるとまだ1/10の規模であり、すでにmixiに対する疲労感を言い出す人々が現れている状況を見ると、これとは別のコミュニティーが受け入れられる可能性は、非常に高いと言えるのではないだろうか。
さらに、SNSの場合、ひとつのサービスがmixi程度に成長すれば、属性上別の類似サービスが同時に成長することが難しいため、mixiの代案として別のSNSが追加で成長するよりも、ミニブログのような新しいサービスがその代わりとしてその地位を取って代わる可能性が大きいと思われる。
理由2:ブログより敷居が低い
第2の理由として、ブログに比べ相対的にストレスが小さいパブリッシングツールであるという点だ。
相当数のブロガー達が個人的な内容をブログに投稿するという点を勘案しても、ブログに投稿するという事は一定以上の緊張感を要求される行為だ。
しかし、ミニブログはブログに比べ非常に気楽に投稿する事ができる。実際に株式会社アクセラージャパンのchat.doovii.comに投稿された文章を見ても
「塩焼きそば うまっ(゚∀゚)」
「3時のレビューまで暇になってしまった。空いた時間で何か学ぼうかな(><)」
といった非常に個人的で短い文章が大部分であり、これらを見てもミニブログはブログよりも接近しやすいCGMであると言えると思う。
理由3:モバイルとの相性がよい
第3の理由は、モバイルインターネットと非常によい愛称を持っているサービスという点だ。国内で若者の心を囲むWebサービスになるためにはモバイルインターネットを支援する機能は欠かせない。
現在の国内の状況を見ても、ブロードバンドの普及率上昇にもかかわらず、20代のモバイルへの傾倒はさらに進んでいる。
このような状況でミニブログの一番大きい消費者層となるであろうと思われるのは勿論10代と20代である。
その点を考慮したとき、ミニブログはモバイルとの連携性のみならずモバイルサイトだけでも十分に楽しむことができるよう開発されなければならない。
この観点で見ると、ミニブログサービスは非常にモバイルサービス化しやすいサービスであるといえる。
モバイル支援機能を中心にtwitter.comを始めとする欧米のミニブログサービスを見ると、モバイルインターネットとの連携が抜けており、SMS(Short Message Service:ショートメッセージサービス) とのみ連携されている状況である。
今年に入り始まった韓国の2つのミニブログサービス、playtalk.netおよび、まだクローズドベータ状態であるme2day.netの場合を見ても、完全にこの部分(モバイルインターネットとの連携)を無視しているのは非常に面白い。
ミニブログ成功の障壁
一方で、ミニブログを成功するサービスとして定着すると仮定したとき、ひとつだけ残っている問題がある。
それは、ミニブログを有意義な広告媒体として育てるために何をしなければならないかという点だ。
非常に短い文を投稿するミニブログのポストと、このポストにつけられるコメントのみに頼っていては、グーグルアドセンスのテキストマッチングエンジンがうまく作動することはできないだろうと予想できる。
その上、テキストマッチングが成功し、関連性が高い広告表示がある程度成し遂げられたとしても、チャッティングサービスと類似したミニブログでは関心の移り変わりが非常に激しく、テキストマッチング広告がユーザーたちの注目を集めてクリックされる可能性は極めて低いと予想できる。
もちろん、企業がブログを利用したマーケティングに積極的に乗り出している前例に照らし合わせ、企業側がマーケティングの一環としてミニブログを利用し顧客との関係構築を試みる可能性は非常に大きい。
だが、これだけではミニブログが広告媒体として独立的に有意義となる可能性が非常に低いと予想できる。
究極的にはミニブログだからこそ可能な新しい形態の高い広告効果を持つモデルが出てこない限り、ミニブログが本当の成功を収めるのは難しい。
このようなことからも、現在ミニブログサービスのオープンを準備している企画者たちは、この部分に対する悩みで、しばらくは眠れない夜を過ごさなければならないのではないだろうか。